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【IXI創設メンバーによるナレッジ共有会】イノベーションを起こすのは”人”

2023年夏、IXIメンバーに向けたナレッジ共有会が開催されました。登壇したのは、40年以上オムロンで活躍し、IXIの立ち上げにも携わった2人のメンバー。長いオムロン人生のなかで得た気づきや知見をIXIメンバーと共有し、今後の仕事との向き合い方に活用してほしい、というねらいで語ってくれました。それぞれの経験から導き出した、“働くうえで大切にしたいこと”とは、一体どんなものなのでしょうか。

この記事の登場人物
勅使川原 正樹さん
:立石電機(現オムロン)に入社後、技術本部での技術開発、経営企画室での経営企画、環境事業推進本部等での事業開発を経て、イノベーション推進本部に参画。2023年にイノベーション推進本部を卒業。

竹林 一さん
:立石電機(現オムロン)に入社後、事業部でのシステムや新規事業開発、ソフトウェア会社やEMS会社、ヘルスケアサービス会社の社長を経て、イノベーション推進本部に参画。2023年にイノベーション推進本部を卒業。

組織名、役職などは取材当時のものです。


さまざまな場面で見えてきた“人”とのかかわり方

最初に登壇したのは、1981年にオムロン(当時の立石電機)に入社した勅使川原さんです。42年という長い勤務歴の中で特に印象深かった出来事から、どのような学びが得られたかを教えてもらいました。

中央研究所(現・技術本部)に配属され、技術者として働いていた若手社員時代。とあるアプリケーションの改良を任され 、試行錯誤を繰り返しましたが、結局自分の力では解決に至りませんでした。勅使川原さんにとって苦い思い出になりましたが、改善に向けて尽力する姿を工場担当者の方が評価してくださり、結果的に別のアプリケーションを導入していただくことができました。工場担当者の方とのつながりや支援に今でも感謝していると語ります。

30代後半のころ、本社の経営戦略室に配属された際は、同種の部品を製造する複数の工場をまとめるプロジェクトに携わります。勅使川原さんは、それぞれの工場の仲介役として奔走しますが、プロジェクトの遂行を優先するあまり、現場で働く人たちの立場に立って考えることを疎かにしてしまいました。周囲からの指摘で、初めてそのことに気づかされたといいます。「理屈は大事だが、人の気持ちに寄り添うことが何よりも大事だ」と、身にしみて感じた出来事だったそうです。

その後、事業開発本部に異動し、環境事業開発に携わることになった勅使川原さん。とある自治体との共同プロジェクトで学校を対象とした節電対策に取り組み、後に官公庁から表彰されるほどの大きな成果を上げました。しかし、この取り組みを全国に広げようと日本各地の自治体へ足を運んで提案しますが、なかなか賛同を得ることができません。取り組み自体は素晴らしいものでしたが、それぞれの自治体が持つ事情や背景があり、「自分たちが良いと思ったものが、誰にとっても良いものであるとは限らない」という気づきを得る機会になったといいます。

勅使川原さん

失敗から学んだ、“人”と向き合うことの大切さ

これらの勅使川原さんの実体験からは、大きく3つの学びを得ることができます。

  1. 人とのつながりや縁を大切にすること

  2. 相手の立場に対して想像力を働かせること

  3. 自分の考えを押し通そうとせず、客観視すること

共通しているのは、「物事を成功に導くためには、“人”ときちんと向き合うことが大切である」ということです。事業やプロジェクトは自分だけの力で進めることはできず、周囲の協力が必要不可欠になります。相手と同じ目線に立ち、理解し合いながら併走していくことが、成功への何よりの近道になるのです。

また、勅使川原さんは「失敗したからこそ、これらの気づきを得ることができた」とも語ります。失敗をすべてマイナスと捉えるのではなく、失敗から学んだことを次に活用するプラスのマインドチェンジが重要であることも伝えてくれました。その気づきは、IXIが大切にする姿勢「Try&Learn&Share」「エンパシー」に受け継がれています。


生きるために必要な4つの「しごと」

続いて登壇したのは、イノベーション推進本部のシニアアドバイザーである竹林さんです。勅使川原さんと同じく1981年にオムロンに入社し、エンジニア、プロジェクトマネージャーを経て、グループ企業の代表取締役なども経験した竹林さんからは、イノベーションを起こすために重要な考え方について語られました。

冒頭、「みなさんにとっての『しごと』はなんですか?」という問いかけから始まった講演。竹林さんによると、「しごと」には下記の4つがあるそう。

私事:自分自身がエネルギーをもらえること
仕事:職業や業務としてすること
志事:心が突き動かされること
使事:使命として与えられたこと

「これまでは会社を主体とした“仕事”への価値観が重視されてきましたが、これからはアイデアを実現したい“個人”によって会社が変わっていく時代になりました。一番良いのは“私事・志事・使事”が“仕事”を通じてやりたいことと一致すること。そうすれば、多少のことがあっても突破できる力になります」(竹林さん)

竹林さん

「起承転結」の人財が社会を動かす

4つの「しごと」が一致することが、イノベーションを起こすための大事な力になると語る竹林さん。さらに、「イノベーションを起こすためには“人”の存在が重要」と続けます。竹林さんによれば、企業や社会において人の役割は「起承転結」の4つの層に分けられるといいます。

起:0から1を仕掛ける人財
 →10年先を見据えたアイデアを出す
承:0~1をN倍化(10、100·∞)する構造をデザインする人財
 →「起」のアイデアを吸い上げ、グランドデザインを描き、個別のビジネスに落とし込む
転:1をN倍化する過程で効率化し、リスクを最小化する人財
 →個別のビジネスを分析し、事業計画やKPI設定を行う
結:仕組みをきっちりとオペレーションする人財
 →事業計画に沿って実行に移す

「起承の人財がアイデアを出してイノベーションを起こし、転結の人財がアイデアを実現させるオペレーションを担当します。事業にとってはどちらも重要な役割を持っていて、この2つの文化をどう共存させていくかが、今後の新しい事業を立ち上げるうえでのカギになります」(竹林さん)
 
竹林さんは、イノベーションを起こすためには連続起業家の思考プロセスから学ぶことも多いといいます。連続起業家とは、生涯の中で連続していくつもの事業を立ち上げている起業家のこと。世界的経営学者サラス・サラスバシー氏が連続起業家を分析し、発見した理論「エフェクチュエーション」がイノベーションの起こり方を分かりやすく説明しているそう。
 
「エフェクチュエーションは、既に持っているリソースで動き始め、行動しながら目的を見出していく、つまり『走りながら考える』という考え方です。いま自分たちはどんな資源を持っていて、どんなことが得意なのか、何ができるのかをまず考え、次にパートナーのコミットメントを獲得します。パートナーの持つスキルも使い、“共創”することで新しいゴールが生まれる。その一連のサイクルが回っていくことでイノベーションが生まれると考えられます」(竹林さん)

イノベーションは“結果”、イノベーションの原点は“人”

竹林さんは「イノベーションを起こすためには、まず“風土”が必要」と語ります。まず、組織の中でコミュニケーションが生まれる。そこから組織のモチベーションが生まれ、モチベーションのある組織からイノベーションが生まれます。イノベーションが生まれる“風土”は、人と人とがコミュニケーションをとり、モチベーションを高めていける、心理的に安全な組織に自ずと生まれるものなのです。

「自分の信念に従ってやりたいことを続けていれば、それに賛同した人々が集まり、新しい価値が生み出されます。その結果を見て、外部の人が『イノベーションを起こした』というラベルを貼ってくれる。つまりイノベーションは“結果”なのです。そして、イノベーションの原点は"人”。実現に向けて動いている間は大変ですが、自分の内発的動機と自分の志が一致していれば、何度でも立ち上がれるはずです」(竹林さん)

そう語る竹林さんがIXIメンバーに贈った言葉は「年中夢求」。自分の志をつらぬくために、夢を持ち続けてほしいと、力強い言葉でメッセージを送ってくれました。


まとめ

2人のIXI創業メンバーによって語られたのは、物事を成功に導き、イノベーションを起こすために「“人”とのかかわりを大事にすること」、そして「夢を持ち続けることの大切さ」でした。

IXIは、課題解決とイノベーションに取り組む際、大切にしたい考え方として「(IXI)バリュー」をメンバーで共有しています。「(IXI)バリュー」にはスピードを大切にすること、メンバーとの相互理解とサポートなどが挙げられますが、中でも「Try&Learn&Share」「ゲンバ(課題の震源地である現場にヒントを見出し、熱量を感じる)」は先輩たちの経験と思いから生まれたものなのかもしれません。

IXIを創り上げた先輩たちの思いは、いまIXIで活躍しているメンバーの胸に確かに届いています。新しい事業を創りたい、世の中を変えていきたいと考えている方、ぜひ私たちと一緒にイノベーションを起こしませんか。


オムロン株式会社 イノベーション推進本部(IXI)については、以下の公式ページをご覧ください。