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【HR担当インタビュー】人財の“心”を動かす人事とは。なぜ入社初日からパフォーマンスが発揮できるのか

転職を考えるとき、新たな環境を楽しみに感じるのと同時に、漠然とした不安を感じる人も多いはず。新たな企業にジョインするときは特に、組織風土やチームにすぐになじめるか心配になりますよね。新しく組織に加わる人ができるだけ早く本来の力を発揮するために、企業側ができることとは?

オムロンから生まれた、社会的課題の解決に挑む事業創造プラットフォーム「IXI(イクシィ)」の組織や活動内容に迫るインタビュー企画。今回は、「働く人を幸せにしたい」という強い気持ちを持って長く人事に携わっている、HRのプロフェッショナルに話を聞きました。

この記事の登場人物
中村 愛さん:複数社で人事担当を務め、2018年よりオムロンの事業に携わる。イノベーション推進本部エンゲージメント推進部で人事に関わる基盤業務を担当。オンボーディングの企画制作から出社メンバーへの声かけまで、多角的なバックオフィスを展開している。

組織名、役職などは取材当時のものです。

様々な意見を集約して構築するHR戦略

人を活かすオンボーディング

現在、エンゲージメント推進部で人事に携わるメンバーは5人。中村さんの業務は、人事の中でもEX(Employee eXperience:従業員体験)ジャーニーマップの設計やオンボーディングの企画など多岐にわたります。オンボーディングとは、新しく組織に加わった人にいち早く職場に慣れてもらうことで、組織への定着・戦力化を促進するための取り組みのこと。中村さんは2023年からEXジャーニーに沿ったオンボーディングに着手しています。まず、組織にジョインする時期を「内定〜入社前日」、「入社当日」、「はじめて業務をリードする」、「チームを代表して提案する」という4つのフェーズに分割。それぞれ「入社前日まで」の段階なら「入社後すぐに業務に対し能動的な行動を起こせる状態になっていること」、「チームを代表して提案する」段階なら「今までの経験/スキルを発揮してアウトプットを作成し、チーム外の意思決定者にぶつけることができること」といったゴールを設定しています。

中村:
EXジャーニーに沿ったオンボーディングは人事に携わるメンバー以外の意見も積極的に取り入れました。オンボーディングの目的は、新たなメンバーが持っている能力を最大限に活かせる環境にしていくこと。私たちの勝手な思い込みを入れないように気をつけています。

オンボーディングの企画にあたって、自分と違う立場の人の声をヒアリングした結果、今までの思い込みを覆す発見もたくさんありました。

様々な意見を集約してできたオンボーディング施策は、新メンバーをサポートする役割の人にも自信を持って取り組んでもらえるものになっています。この施策は新しくできたばかりなので、さらに意見を取り入れてアップデートしていきたいと思っています。

安心感を持てるコミュニケーションを

中村:
コロナ禍で対面のコミュニケーションが取れないことも増えましたが、出社しているメンバーや、新メンバーに積極的に声を掛けること、オンラインならばできるだけ早く問い合わせへの返信をするなどを心がけています。

新メンバーが何か疑問に思うことがあっても、誰に聞けば良いのか分からず、そのために本来の業務に割く時間が少なくなるとしたらそれはとてももったいない。無駄をなくすためには、何でも気軽に相談できる環境が必要です。IXIメンバーとのチャットでは常に活発に稼働していて、質問にはすぐに答えが返ってくる環境ができあがっています。

豊富な経験値を持つ多彩なメンバーと円滑に交流できることは、新メンバーにとっても大きな安心につながることは間違いありません。


入社初日に“誰もが知っている”メンバーの一員に

中村:
IXIでは2021年から新メンバー採用を開始しています。2023年では9名の方が採用され、そのうち3名がEXジャーニーに沿ったオンボーディングの施策によって組織にジョインしていただきました。3名の採用時に共通していたのが「入社初日から他のメンバーにとって“知らない人”ではない」ということです。
入社の第2フェーズとなる「入社当日」は、一般的には採用されたメンバーが他のメンバーと初めて顔を合わせる日。初日に自己紹介で顔を知ってもらい、時間とともに人となりが知られていくということが多いのではないでしょうか。そんな中、IXIのHR戦略では入社前に一度新メンバーと既存メンバーで交流する場を設けることにしています。すると、入社初日の自己紹介では“彼はこんな趣味があって”や“こんなことをやってみたいそうだよ”という“他己紹介”も始まることに。最初から新メンバーの人となりを知れることで、部内の他メンバーも他人ではなく既知の“仲間”として新メンバーを受け入れることができるのです。新メンバーにとって、最も緊張する入社初日。その1日がとても和やかな、歓迎の雰囲気があふれる日になる仕組みです。入社初日から“誰もが知っている新メンバー”は、組織を強くする上で大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。


ミスマッチを防ぐ丁寧なヒアリング

IXI人事の課題とこれからの展望

入社の前と後で、想定と実態にギャップが生まれるミスマッチも採用時に起こりがちな問題のひとつ。入社するときに思い描いていたものとは違う業務を割り振られ、希望と実態がそぐわないまま時間が過ぎてしまうということも現実には起こりがちです。IXIのHR戦略ではそのミスマッチをどう防いでいるのでしょうか。
中村さんは入社前後におけるギャップを防ぎ、信頼関係構築のため「入社後は徹底的にヒアリングする」と話します。

中村:
新メンバーが違和感を持たず、安心感を持って環境になじめるためには、やはりバックオフィスがしっかりサポートしていくことが大切。スムーズに組織になじめるよう、確実なヒアリングでサポートする仕組みを作りたいと思っています。

例えばオンボーディングの施策を実行している3名は当然、違った個性があります。新たなキャリアに夢を持って入社した人もいれば、社会的課題解決に具体的なビジョンを持って入社した人も。寡黙な人もいれば、誰とでもすぐに打ち解ける人もいます。

そこで、信頼性構築のための入社後のヒアリングでは、それぞれの保有資格、スキルなど会社で必要な人事情報だけでなく、たとえば、その方の価値観、キャリア像、ライフスタイルなどミスマッチの要因となり得る項目を意識して確認するようにしました。EXジャーニーを設計する際には様々な項目を設けていますが、その人の描くキャリア像が属人的な要素でなく属性によって変わるものだとしたら、EXジャーニー設計の施策を変更しなければいけないかもしれない。施策の妥当性を検証するためにも確認とフィードバックは大切だと思っています。

EXジャーニーに沿った新たな採用スキーム構築から1年。現在、そのスキームを活用している部門は限られています。中村さんはオムロン社内の多くの人に認知してもらおうと社内営業も展開しています。

中村:
イノベーション推進本部全体で、新しいメンバーのサポーターになっていくような“温かみ”を作っていきたい。なるべくたくさんの人にこの施策を理解してもらおうと日々動いています。
様々な部門に新しい採用スキームが広がれば、それだけ多くの人の目線や意見を集約することができる。そうすることでさらに良い採用スキームができあがるのではと考えています。


一丸で新規事業に取り組む、強い“チーム”を作れる採用に

「人事は“何でも屋”ではいけない」、「困っている人を助けるだけの受け身の人事から変わる時がきているのでは」と中村さんは語ります。中村さんが描くのは“攻めの人事”。

中村:
人事というのは、企業にとって利益を生み出すわけではないので日頃は裏方ととらえられがち。けれど、組織にいる人の心を動かすことは私たちにしかできないことだと思っています。
これからは、エネルギーに満ち溢れ、無邪気さをもって新規事業に取り組むことのできる老若男女問わず、様々な人に来てもらいたい。一緒にチャレンジを楽しめる人に、ぜひ興味を持ってほしいです。イノベーション推進本部のエンゲージメント推進部全力でサポートします。

新メンバーの個性に合わせて構築されたオンボーディングと、入社初日からスムーズにジョインできる様々な施策。IXIの新しいHR戦略は、人財の力を引き出し、今後事業の隠れた牽引力となっていくことでしょう。これからの企業にとって鍵となるのは、人財の“心”を動かすHR戦略なのではないでしょうか。