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価値観から紐解くスマートM&S事業部 ー目指すのは同じベクトルで自律的に行動できる組織ー

企業で働くとは、同じ世界観の実現を目指して歩みを進めるということではないでしょうか。では、目的地まではどのようなルートを辿るのか。

人は欄干のない橋を渡ると、落ちないかという不安からつい中央を歩いてしまい、橋の上を自由に歩けないと言います。これは組織においても同じで、組織における欄干となる価値観、判断の軸を把握することができれば、心理的なブレーキをかけずに目的地へ向けて走り抜けることができるのではないでしょうか。
 
では、スマートM&S事業部で働く人々は、どのような価値観、判断軸のもとで日々の業務に取り組んでいるのでしょうか。事業責任者の杉山さんと丸雄さんに伺いました。(スマートM&S事業部に関する記事はこちらからご覧いただけます。)

お話を伺った方
杉山さん データソリューション事業本部 スマートM&S事業部 事業責任者
 
1992年オムロン フィールドエンジニアリング株式会社入社。カスタマーエンジニアとして銀行のATM保守運用に従事し、顧客営業や保守運用全般統制に携わった後、2017年から同社経営企画部にてマネジメント・サービスの企画を推進。2023年12月のデータソリューション事業本部設立と同時にスマートM&S事業部の共同責任者に着任。

丸雄さん データソリューション事業本部 スマートM&S事業部 事業責任者
米国の大学で航空宇宙工学を学び、航空機内装品関連の在米日系企業にエンジニアとして就職。在職中にMBAを取得し、事業企画を担うストラテジック・ビジネスプランナーへ転向。2016年に日本へ帰国し、コンサルティング会社にて戦略策定関連プロジェクトに携わる。製造業において事業企画・戦略策定に携わりたいという想いから、2021年5月オムロン株式会社へ入社。新規事業開発をリードするイノベーション推進本部(IXI)を経て、2023年12月よりスマートM&S事業部の共同責任者を務める。

組織名、役職などは取材当時のものです。

「人手不足の解消と働き手のエンゲージメントの向上」に寄与するかどうかがスマートM&S事業部の判断軸

丸雄さん

丸雄:「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」
これはオムロンの社憲であり、創業者の立石一真氏が社員に向けて語った企業の公器性をわかりやすくまとめたものです。
 
オムロンはこの企業理念を非常に大切にする会社です。企業理念に立ち返って考える機会は実務の中でも多く、「この事業を通じて社会価値を生み出せているか」という議論が日々交わされますし、経営層からのメッセージでもよく耳にします。
 
スマートM&S事業部で大切にしている価値観や判断軸についても、土台となっているのは企業理念です。そのうえで考えるべきは、「人手不足の解消と働き手のエンゲージメントの向上」です。私たちは、働きやすさと働きがいを両立している企業がもっとも高いパフォーマンスを発揮し、業績も高いと思っています。そのため、生産性の向上や働きやすい環境整備はもちろん、働き手のエンゲージメントの向上も大切であり、スマートM&S事業部はこの両立を提供価値の中核に据えたいと考えています。

杉山さん

杉山:正直、従来のオペレーション・メンテナンスやマネジメント・サービスを行っている際は製品を使用するお客様の働き手のエンゲージメントをあまり意識していませんでした。お客様がコア業務に専念できるよう困ったら即日駆けつけ、何時間で機械復旧といった機能的価値は議論しても、コア業務に専念できることでお客様がどんな状態に変化するかまでの本質的な価値まで考えられていなかったのが実情です。
 
しかし、丸雄さんとスマートM&S事業部の提供価値や事業活動について議論する中で、私たちの提供価値によってお客様にどんな変化が起こるのだろうかとの会話がなされるようになり、そこで初めて「エンゲージメント」という言葉が出てきたのです。
 
働き手のエンゲージメント向上は現場での課題ではなく経営者の課題になることから、スマートM&S事業部では「人手不足の解消と働き手のエンゲージメントの向上」の両立を提供価値としなければならないとの結論に至りました。

異なる戦略的思考による相乗効果を求めて、共同事業責任者へ

ースマートM&S事業部では杉山さんと丸雄さんの2人で共同事業責任者を務める体制を採っていると伺いました。その背景を教えてください。

杉山:共同責任者という形を最初に発したのはデータソリューション事業本部長の石原さんだったと思うのですが、言われてすぐ腹落ちしたんですよね。なぜかというと、私の現場経験に基づく知見や戦略的思考と、丸雄さんの他業界を知る俯瞰的視点や戦略的思考が掛け合わさることで、戦略の深みや提供価値の広がりが生まれると思ったからです。
 
丸雄:企業においてはCEOだけが経営を担っているわけではなく、CFOやCOOなど様々な能力を持ったメンバーが役割分担をしながら経営を遂行しています。これは事業経営でも同じで、私は事業責任者が全知全能であるわけではないと思うのです。
 
杉山:スマートM&S事業部のミッションには事業的役割と機能的役割の縦横機能があり、縦機能のビジネスカンパニーと連携しないと実現しないことが多くあります。私の強みはビジネスカンパニーとの連携に欠かせない現場理解であり、長年の経験から得た知見を基に現場が求める戦略を描けることです。そこに事業戦略を得意とする丸雄さんの視点が加わることで、より厚みのある、お客様にとって最適な価値を提供できるのではないか。二つの視点を掛け合わせられる共同責任者という体制が、スマートM&S事業部に求められる横機能を実現するのに最適だと思えたのです。
 
丸雄:私が杉山さんの人間性に魅力を感じたことも大きいですね。杉山さんは、前所属先のオムロンフィールドエンジニアリング株式会社(以下、「OFE」)において、現場活動を通して社会的課題解決を行ってこられた、まさにオムロンらしさの体現者です。その杉山さんが実現したい事業を一緒に作っていきたいという思いは日々高まっています。
 

杉山:丸雄さんに「OFEってオムロンの社憲を実践している会社ですね」と言われたことは印象に残っています。入社してからずっとお客様と対峙して、お客様のお困り事を解決することが当たり前だと思っていましたが、改めて社憲が仕事になっている素敵な環境だと気づきました。

明確な役割分担はしない。顧客提案もメンバーのマネジメントも二人三脚で推進する

ー共同事業責任者としてどのような役割分担で日々の事業活動を進めているのでしょうか。

杉山:異なるキャリアを持つ私と丸雄さんがそれぞれの視点を掛け合わせて一緒に事業を作り上げていくので、役割分担の面で明確な線引きはしていないです。情報格差が出ないように、日々コミュニケーションを取ってお互いの考えを共有しています。
 
例えばお客様向けの提案資料を作る際、現場経験を基に、最初に私がベースシナリオを描きます。そこに丸雄さんの客観的な視点を掛け合わせ、二人三脚でお客様への提供価値をバリューアップし続けます。
 
全くタイプの異なる人間同士だから共同事業責任者という形を採っているので、考え方や視点に違いがあるのは当たり前です。違いを前提としながら掛け合わせることで、新たな気づきが広がり、厚みのある戦略を作れる。そうしたバリューアップし合える関係性です。
 
丸雄:2人の間では違いを大事にしていますが、メンバーに対しての発信はお互いが違うことを言わないよう気をつけています。事前にすり合わせをして、どちらから、どのようなニュアンスで言うかを決め、一貫性のあるメッセージを伝えるようにしています。

目指すのはベクトルを最大化することのできる組織

丸雄:スマートM&S事業部が目指すのは、一人ひとりが自律的に行動できる組織です。トップダウンで一方的に進めていくのではなく、メンバーが考え、行動を起こす機会をいかに提供できるか。そこに重きを置いたマネジメントをしていきたいと考えています。
 
例えば、これから要件や仕様確認なども発生してきますが、そこで齟齬が発生した場合、その前段階で行なっている要件定義を基に、生まれたギャップに対して新たな定義を採用するのか、要件と仕様の相違点を修正するのか、まずはその要件定義を行った人の意見を尊重しながらメンバーと議論を重ねた上で、最終的には二人で考えて判断を出すと思います。
 
異なるバックグランドを持つメンバーが集まった組織なので、意見齟齬や衝突を恐れることなく、誰もが忌憚なく意見を言える環境を整えて積極的に議論できるようにしていきたいです。

杉山:議論した上で判断の拠り所となるのは、オムロンの社憲であり、長期ビジョンSF2030で掲げる社会的課題の解決やスマートM&S事業部が判断軸としている「人手不足の解消と働き手のエンゲージメントの向上」の両立に寄与するかという点です。
 
加えて、スマートM&S事業部においてはタイプの異なる二人が共同事業責任者を務めています。考え方や視点が異なるからこそ、なぜその視点、なぜその考えに至ったのかをお互いにしっかり理解したうえで判断する必要があると思っています。
 
今はまだ小さな組織で、流通・小売業界に向けた取り組みから始めていますが、メンバー一人ひとりが、3年後、10年後にはこんな事業を行いたいといったアイデアを出し合い、みんなで実現していきたいです。
 
それぞれがバラバラの方向を向いていたのでは一つのチームにならないので、みんなで議論を重ねながらベクトルを最大化できるような、自律的に行動できるチームを目指したいですね。

「自ずと律される」メンバーが集まる自律的な組織となるために

丸雄:「自律」という言葉は、「自ら律する」と「自ずと律される」の2つの解釈が出来ると思いますが、私は「自ずと律される」がいいなと思っています。自ずとベクトルが合うためには、まず一人ひとりが自ら考えて行動することが必要で、その向かう先が自ずと同じ方向でなければなりません。そうした組織を目指していきたいです。
 
先日、部門内のキックオフを行い「一人ひとりがリーダーとして自分の境界を越えていこう」というメッセージを出しました。リーダーの動詞”Lead”は”Leith”というインド・ヨーロッパ語を語源に持ち、「敷居を越えて最初の一歩を踏み出す」という意味を持ちます。だから、メンバーのみんなにも我々が目指している社会や、実現したい事業を見据えながら境界を越えてほしい。そのために一人ひとりが自律的に行動してほしいとの意味を込めました。

杉山:自律的な行動としてメンバーにまず求めるのは、人と人との関係作り、事業部を越えたコミュニケーションといった行動です。特にスマートM&S事業部は、オムロンの既存事業を発展させながら新規事業を作り上げていく事業的役割と機能的役割の両方を担うため、 他のビジネスカンパニーや連携する企業とのコミュニケーションを自ら行うことが大事になってきます。
 
関係性ができると、色々なところから事業アイデアは自ずと出てきます。アイデアを考えるためにはまず行動して、そこからの気づきをアイデアに持ってくるというサイクルを回してほしいですね。

求めるのは黒子的役割に誇りを持ち、社会的課題の解決に本気で挑むプロフェッショナル人財

ー最後にお聞きします。スマートM&S事業部が求める人財とはどのような方でしょうか。

杉山:我々の事業は表舞台の華やかな仕事ではなく、社会・生活インフラを裏方として支える黒子的役割を担うことが多い仕事です。しかし、今日もきちんと電車に乗れる、コンビニで飲み物を買えるという当たり前を維持するところに、我々の価値が発揮されていると共感し、誇りを持てる人こそ私たちが求める人財です。

丸雄:だからこそ結果が出るまでに時間はかかりますし、コミュニケーションが多分に必要とされる場所なので、ご自身の短期的なキャリアアップやスキルアップを優先したい方には合わないかと思います。
 
自分が提供できる価値を社会のために寄与したいという強い意志を持って、社会的課題の解決に腰を据えて取り組める人。社会の動きを見ながら、お客様の課題を見つけ、それを解決するための仮説、仕組みを考え、自ら周りを巻き込みながら行動できる人。高い総合力を求められますが、プロフェッショナルな皆様と一緒に働けることを楽しみにしています。