【テックリード座談会】 新規事業専門のエンジニアが築く未来への礎
オムロンから生まれた、社会的課題の解決に挑む事業創造プラットフォーム「IXI (イクシィ)」の組織や活動内容に迫るインタビュー企画。今回は技術の面から事業の推進を支えるテックリードの4名を取材。IXIにおけるテックリードの役割や仕事面での難しさ、魅力などを赤裸々に語っていただきました。
それぞれに強い想いを持ってIXIへ
IXIに参加されるまでのキャリアや経緯を教えていただけますか?
和田:
元々、オムロンのコーポレートR&D部門で研究開発活動を行い、事業部に対して新たなアルゴリズムなどを研究開発していました。その中で、もっとお客さまに近くて主体的に社会的なインパクトを与えられる仕事がしたいと思い、IXIの前身となる組織から7年ほど新規事業に関わっています。玉石混交ではあるものの、さまざまなプロジェクトで延べ10件程度の新規事業企画・開発を行ってきました。
小島:
以前はオムロンの環境関連の事業を担う組織で、太陽光発電の設計や開発に携わっていました。商品開発を行う中で、もっと世の中のためになることをゼロから創りたくなって、社内のキャリア支援制度を活用してIXIへの異動を希望し、ジョインしました。今年で5年目になります。
松本:
IXIに参加したのは2021年です。開発の仕事はかれこれ27年ほどやっています。最初はシステムインテグレーターとして、開発を請け負う側の仕事をしていました。その後、起業した後に共創パートナーとしてベンチャーを探索する中で、最終的にIXIにたどり着いた形です。昔からお世話になっていた方に自立支援事業の話を聞いて、社会的意義も高く、私がやりたかったことが盛りだくさんでおもしろそうな仕事だなと思って転職を決めました。
伊藤:
私のキャリアのスタートは、大手電機メーカーのエンジニアです。そこからベンチャーや大手医療機器メーカーでの開発職を経て、2016年にオムロン ヘルスケアの開発部門に入社。2020年からIXIで働いています。
今の具体的な業務内容を教えていただけますか?
小島:
今は自立支援事業を担当していて、高齢者の方に運動を通じて元気になってもらうために、どうテクノロジーで支援していけるか、それをどう事業につなげていけるかの検証をしています。筋肉をつけるためには高齢者の状態に合わせた適切な運動が必要ですが、高齢者の中には高血圧や心疾患の方もいらっしゃるので、介護の現場ではそういったリスク管理が介護の現場では特に難しいんです。そこで今は、リアルタイムに脈拍を可視化しながら、一人ひとりが適切な強度で運動できるようなソリューションを開発しています。
和田:
私は自立支援事業の地域包括支援センター向けソリューションの企画・開発を担当しています。介護の現場では、ケアマネージャーさんが高齢者の状態を把握して、再び自立した生活ができるようにするためのプランを立てる「アセスメント」と呼ばれる作業があります。しかし、一人ひとりに合わせたプランを作成するのはとても難易度が高いということを現場を通じて体感してきました。その課題に対して、アセスメント業務を効果的かつ効率的に変化させるソリューションを作っています。実際にケアマネージャーさんにインタビューをしたり、アセスメント現場に同行したりして課題を理解してきました。その課題がなぜ起こっているのかという仮説を立て、それに対する解決策を現場のケアマネージャーさんを巻き込み、試行錯誤を通じてシステム化し、リリースしました。リリース後も、実運用を通じて見えてきた課題を解決するアップデートをし続けています。
松本:
私は、今の和田さんの話と少しレイヤーが違うものに取り組んでいます。和田さんは企画寄りで、私はシステム寄りのソフトウェア関連を中心に携わっています。どうやったら実現できるのかと議論しながら、まずはひとつ作ってみて、それをどう拡張させられるか、といったようなことに日々取り組んでいます。
伊藤:
私は3人全員と、それぞれドラマチックな状況の中で一緒にお仕事をしたことがとても記憶に残っています。和田さんとは、この自立支援テーマでモノづくりをしなければいけない時に、予算もなければIXIでモノづくりの実績もプロセスもない中で、ハードルだらけのプロトタイプ開発とローンチを一緒に達成することができました。それを発展させた商品開発では、経験豊富な松本さんとともに、大規模な商品開発の計画と具体の進め方に一緒に頭を悩ませながら、何とか当初の計画通りに開発着手まで持っていくことができましたし、ステークホルダーと密に連携してコミュニケーション不足による手戻りをゼロにし、商品のファーストローンチに貢献することができました。小島さんとは自立支援の事業所側のプロトタイプ開発をご一緒し、UI/UXデザインとプロトタイプ開発をわずか3ヶ月でやってしまうという、かなりチャレンジングな攻めの開発をしましたね。
技術の力で事業を牽引できる存在に
IXIにおけるテックリードとは、どんな人たちを指すのでしょうか?
伊藤:
一言で言うと、テクノロジーに軸足があるアーキテクトだと思います。
松本:
一般的なテックリードって、開発チームの中で技術的なスキルを持って牽引していく人っていうイメージだと思いますが、IXIのテックリードはユーザーや現場だったりを考えながら、商品やサービスに適合する技術をリードしていかなければいけないんです。俯瞰的にいろいろな技術を見ることができるので、刺激が多いですね
小島:
よくある、企画側が決めたものを「こんなんじゃ間に合わない」って言いながら作ってるような感じではないですね(笑)。チームメンバー同士でこういう手段だったらこんなことできるんじゃないかとか、こういう方法だったらもっとこの技術が生きるんじゃないかと議論しながら、現場やお客さまとも強く連携しながら作っていくのがテックリードなのかなと思っています。
和田:
私は一言で言うと、問いに技術で応えられるスペシャリストかなと思っています。新規事業でプロダクトやサービスを検討していく際に、要件に対してプラスの価値を作っていけるような人が、IXIにおけるテックリードなんじゃないでしょうか。
事業のフェーズによって、やらなければいけない作業も変わってくるということでしょうか?
伊藤:
そうですね。テックリードって非常に難しい役職だと思います。個人情報などの繊細な情報を扱いつつ、応用力も発揮して、いかに早くモノづくりを行うか考えながら進めているんです。新規事業なので次々とフェーズが変わっていく中で、各局面に応じて頭を切り替えて、慎重さとダイナミックさをフレキシブルに対応していかなければいけないところが、IXIにおけるテックリードの肝かなと思っています。なので結構つらい場面もあったりするのですが、そこも楽しみながらできているチームだと思いますね。
求められる知識やスキルは何でしょうか?
松本:
あらゆる技術の知識すべてを持ち合わせているスーパーマンはいないので、必要なのは新規事業に対して貪欲に取り込んでいける姿勢だと思っています。IXIにおけるテックリードは、常に新しいことに挑戦して、ひたすら育ち続けることができる人っていうイメージですね。
伊藤:
ここにいるメンバー全員、日々現場で学んでいますし、単純に何か技術を知っているとかじゃなくて、お客さんのところへ行って、現場のことを学んで、技術ソリューションの実現につなげていくってことに長けていることなのではないかなと思います。
本質的な課題を見つける上で、意識していることはありますか?
小島:
課題をヒアリングするだけでは、その人が自分なりに解釈した話しか聞けないですが、現場で実際に参加することで、圧倒的に得られる知見が変わってきます。自分もとにかく現場に行って課題を見つけるようにしていますね。
和田:
お客さまから言われたまま受け入れるのではなくて、上位概念的に考えてみたりしています。例えば自立支援の例で言うと、アセスメントの工程は保険会社や旅行会社がプランを立てるプロセスと似ていたりするので、その仕組みを当てはめて比べてみたりしますね。そんな中で新たな結合が出てきたりするんです。
松本:
バイアスに囚われて反射的な行動をせずに、ちゃんと課題を考察するようにしています。そこは気をつけているところですね。
これからチャレンジしたいことはありますか?
小島:
構想から実際に形にしていくところって、本当に難しくて学びも多いポイントなので、今やっていることを他のテーマにも展開していければと思っています。事業によって求められる技術も変わってくるので、そういったところは学びつつ、自分自身の成長につなげていきたいですね。
和田:
まず近い未来で言うと、今取り組んでいる自立支援のソリューションが日本から世界に広がっていくように尽力していきたいです。さらには組織の中での事業の再現の確度を上げていきたいですね。少し先のことを話すと、自分には2歳になる子どもがいるのですが、その子が将来過ごしていく未来を明るくするために、社会に良いことを生み出していきたいなと思っています。
松本:
今まで身につけてきた技術を、一緒に働いているメンバーに伝授していきたいですね。考え方を変えるだけで、それまでできなかったことが一瞬でできるようになることもあったりするのですが、概念だけ説明しても実行するのは難しいので、実際に見てもらって、体験してもらうことが必要だと思っています。
伊藤:
IXIの中でのテックリードの存在を、もっともっと大きくしていきたいですね。組織の構成比からしたらまだまだ少ないですが、テックリードは事業の中で売り上げを立てるソリューションを実現するというオムロンのコアコンピタンスそのものであり、もっと中心になって組織を牽引していくような存在になっていきたいなと思います。
これからの社会の礎を創る仕事
テックリードの視点で見たIXIの魅力を教えてください。
和田:
事業によって若干変わるとは思いますが、私が一番魅力を感じるのはお客さまや社会との距離が近いことですね。自分が設計したソフトウェアのフィードバックなんかもダイレクトにくるので、いい意味でも悪い意味でもたまに泣きたくなるときもありますが(笑)。それも含めて魅力なんじゃないかなと思います。
松本:
みんなでフィードバックを考察しながら議論している最中に、何ヶ月かに1回くらい、パッとひらめく瞬間があるんですよね。その興奮がやみつきになるんです。みんなで議論して考察して、お客さまのところで検証することを繰り返していくからこそ、ひらめきが起こる日があって、それがとても楽しいですね。世の中で誰もやってないことを発見して、実際に作り上げて、社会に還元していくというのは、ビックリするぐらいアドレナリンが出るんです。
小島:
IXIで取り組むテーマはどれも社会的課題の真ん中にあるものなので、社会的課題を解決したいと願って熱心に取り組んでいる方々と一緒に仕事ができることも、ひとつの魅力だと思っています。自分たちとしては全身全霊で考えているつもりでも、その遥かに上を行くような、この世の中を何とかしたいと思って人生をかけて情熱的に取り組んでいる人たちとたくさん出会うので、すごく刺激になりますね。
伊藤:
魅力もたくさんある一方で、やっぱり新規事業をやっていく中での私たちのような開発という立ち位置は、アイデアを具現化することが大前提として求められるので、すごく難しいですね。作ることが当たり前、スケジュールを守ることが当たり前、つまりできて当たり前なんですが、何を作るかチームの中での共通理解がなかったり、見えていなかったりする状態で着手しなければいけないこともあって…。
松本:
たまに発狂しそうになることもありますよね(笑)。タスクはどんどん積み上がっていきますし。そこをいかにまとめて処理するかが大事だと思っています。「これ本当にできるのか?」みたいな、そういうシチュエーションは多いですね。
小島:
松本さんは経験豊富なのでできてしまうんですけど(笑)、そこがおもしろさであるものの、すごく大変なところでもあるかなと感じています。
松本:
テックリードっていう立場で、ソリューションを実現するために必要なことは全部やってやろうくらいに思って行動しています。いろいろできるのがテックリードだから、チームに1人はいてほしいと思ってもらえていたら嬉しいですね。
IXIやテックリードのカルチャーを教えていただけますか?
和田:
ぱっと思いついたのは「能動的」ですね。自分のしたいことや提案を持ちかけられるような人が、IXIのメンバーには多いなと思います。
松本:
今まで話してきたようなことすべてが、IXIにおけるテックリードのカルチャーなんだろうなと思います。テックリードという言葉だけではまったく想像がつかないような内容の仕事や責任が求められていると思いますね。
小島:
困難な状況でも楽しもうとするカルチャーはあるのかなと思います。正直、前の事業部にいたときよりも大変ではあるのですが、嫌じゃないんです。やっている仕事がダイレクトに社会につながっているので頑張れるのだと思います。松本さんと課題をどう乗り越えるかといった話で盛り上がることもあったりして、そういうところがIXIらしいのかなと感じますね。
最後に、テックリードの職種に興味を持っている方へメッセージをお願いします。
和田:
社会的に意義のある価値を創っていくことに共感していただける方に来ていただけたら、お互い幸せに働けるかなと思っています。
小島:
本当にゼロの部分から事業を創る経験ができるっていうのは、すごくおもしろいことだと思います。一般的にはもう既にできている商品やサービスをアップデートしていくような仕事が多い中で、ゼロから幅広くいろんなことができるのは特徴だと思います。かなりカオスなこともありますが(笑)、そういうのをおもしろがれる人に来ていただけたら嬉しいですね。
松本:
成長したいっていう強い意志を持った方に来ていただきたいですね。今はできないことがあっても、意欲さえあればいくらでも成長できるような職場だと思います。そういう方と一緒に働けたら楽しいですね。
伊藤:
みんな良いことを言ってるので、締めるのが難しいな(笑)。でもやっぱり、今やっている新規事業って、この先の社会で必ず必要になっていく礎みたいなものだと思うんです。私たちテックリードは、モノを作っているのではなく、未来の当たり前を先んじて作っていると思っています。未来の当たり前を一緒に創っていきたい人にぜひ来てもらいたいです。
オムロン株式会社 イノベーション推進本部(IXI)のテックリードメンバーが挑戦する事業領域や自立支援事業については、以下の公式ページをご覧ください。