IXIとDSBが「ニコイチ」で切り拓くオムロンの新規事業
オムロンから生まれた、社会的課題の解決に挑む事業創造プラットフォーム「IXI(イクシィ)」。元々、この公式noteはIXIの活動を紹介するために始めました。
その後、IXIを母体として2023年末にデータソリューション事業本部(DSB)が設立。今ではIXIとDSBの2つの組織が1つの組織のように強固に手を取り合い「ニコイチ」でオムロンの新規事業を牽引する取り組みを進めています。
そこで、本noteもIXIとDSBによる事業創造をお伝えするため「THE ESSENTIALS」へリニューアルしました。
今回は、IXIとDSBという強固なニコイチ組織で目指すオムロンの新規事業について、両組織の責任者を務める石原さんにお話を伺います。
IXIとDSBが「ニコイチ」で描く新規事業の未来像
ーオムロンにおける新規事業を牽引するにあたり、IXIとDSBが密に連携していると伺いました。それぞれの組織は具体的に何を目指しているのでしょうか。
IXIの役割は2018年の設立当時から変わりません。オムロンの第5、第6の柱となる事業を立ち上げること。今すぐ利益を生み出せるものではないけれど、3年後、5年後に大きな利益を生み出すきっかけとなる事業を作ることです。
そして、2023年末に設立されたDSBは、まさにIXIがミッションとして掲げていた新しいビジネスカンパニーとなります。四半期毎の業績開示責任を持ち、データを軸とした新規事業を通して利益を生み出し続けることを求められる組織です。
―2つの組織は「ニコイチ」と呼ばれているそうですが、その意味について教えてください。
「ニコイチ」という言葉はIXIとDSBの2つの組織が切っても切り離せない関係性であることを社員向けに伝えた言葉です。見据えている時間軸は異なりますが、2つの組織が目指す先は同じ「新規事業を通じて、オムロンの新たな価値を提供すること」です。中長期を見据え新たな事業を興すIXIと、立ち上げた事業をマーケットに届け、利益を生み出すDSB。この2つの組織が強固に手を取り合って、2027年に1,000億円の売上を目指しています。
ー2027年1,000億円は高い目標のように感じますが、どのような取り組みを進めていますか。
DSBが持つ6つの事業を拡張していくことから進めています。株式会社JMDCを核とした「ヘルスビッグデータ事業」、そして企業の健康経営の成果創出を支援する「コーポレートヘルス事業」、自治体の介護予防の取り組みを支援する「自立支援事業」、小売流通業の運用・保守をDX化する「スマートM&S(マネジメント・サービス)事業」、工場の“エネルギー生産性“を最大化する「カーボンニュートラルソリューション事業」、さまざまな現場のデータ活用と業務の自動化を支援する「データ活用ソリューション事業」。この6つの事業を拡張、あるいは成長を加速させようとしています。
IXIとDSBの連携強化、「ニコイチ」誕生の背景
ーニコイチという構想はいつからあったのですか?
IXIで立ち上げた事業の出口となる組織の必要性はIXI設立時から感じていました。しかし当時はまだ、オムロンにおける新規事業の解像度は低く、2016年にオムロンベンチャーズ株式会社が設立されていましたが、どのようにスタートアップと協業すれば価値を生み出せるのか見えていませんでした。
そのため、IXIとしてM&Aなどを提案しても承認されないだろうと考え、まずは新規事業への機運を高めるため、小さくスタートすることから始めたんです。どんなに小さなアイデアでも良いから、そこから1つでも2つでも事業を生みだそうと。そうして、事業として花開き、PLを抱えるようになると、開発組織であるIXIの中だけで事業を運営することは難しくなる。そのとき、受け皿となる組織を作ろうと考えていました。
実際にIXIから2つの事業が立ち上がり、経営陣の中でも新規事業への理解が進み始めた、ちょうどその頃、JMDCとの議論が始まったのです。大きな投資を行い新規事業が立ち上がっても、その事業の運営を担う組織がないと意味がありません。JMDCとの資本業務提携をきっかけに、DSBを設立。IXIで立ち上げた事業もDSBへ移管し、IXIで立ち上げた事業を、DSBが事業化してマーケットに届ける「ニコイチ」の関係性ができたのです。
ービジネスカンパニーであるDSBだけで完結するわけにはいかないのですか?
そのような声もあるかもしれません。しかし、新規事業を起点に中長期の成長を描くためには、ビジネスカンパニーと開発組織が独立しながら、両輪を回すことが大事です。その点からも、IXIとDSBそれぞれの組織が存在することに意味があると感じています。
ー取り組みを進めていくうえで、「ニコイチ」であることはどのようなメリットがあるのでしょうか。
DSBが設立される前のIXIは、事業立ち上げと同時に出口探しをしなければならない不安定な状態でした。また、DSBはビジネスカンパニーとして今ある事業の中で利益を生み出す必要があるため、中長期のことを考える余力は限られてしまいます。
しかし、IXIで立ち上げた事業の出口的役割をDSBが担う「ニコイチ」の関係を築くことで、入口から出口まで、そして現在から将来までを一貫して考えられるようになります。
加えて、私のこだわりですが、新規事業の立ち上げと利益創出の責任者は切り離すべきではありません。中長期の新規事業創出を担うIXIと短期的な利益創出を担うDSB、2つの組織の責任者を共に私が担うことで、利益を生み出し続ける組織を作ることができると思うのです。
ー利益創出となるとステークホルダーからの期待もありますね。
DSBができたことによって、経営へのコミットメントができたことはインパクトとして大きいです。経営、つまりは株主へのコミットメントができたことはプレッシャーである反面、事業に必要な投資を求めることができます。
社内における投資理解が進むことで、事業創出の起点を担うIXIの活動も進めやすくなりました。スタートアップ投資やM&Aなどの投資も行いやすくなりましたし、投資しやすくなったことで社員が案件を提案する数もスピードも飛躍的に上がりました。
ーDSBの設立によってIXIの事業創造アプローチは変わりましたか?
はい。DSBができたことをきっかけに、新規事業創造はM&A&A(最後のAはアライアンス)やスタートアップとの共創など、オープンイノベーションを前提とした進め方にシフトしました。
IXIでは設立からの6年間で、アイデアベースでテーマの創出からビジネス検証までを丁寧に進め、2つの事業を立ち上げましたが、それぞれは比較的小規模な事業です。次の成長事業の柱を作るためにはアイデアベースで事業の種を育てるだけではなく、経営戦略的にM&A&Aも選択肢として事業を創る必要があると考えています。
これからIXIは、DSBの注力事業を「ステップストーン(置き石)」として、その周辺事業を先回りして拡張し、成長を加速することに注力していきます。
自らの意志で行動できるメンバーたちと、企業価値向上を実現する
ー中長期を見据えた新規事業の創出と四半期毎の業績を両立することは並大抵ではないと推察されます。両事業のやりがいはどこにあるのでしょうか。
私はオムロンの創業者・立石氏が掲げてきた「事業を通じて、社会をよりよくしていく」に共感してオムロンに入社しました。社会をよりよくするだけでは意味がなくて、利益を生み出しながら、その利益を再投資して社会をよりよくしていく。オムロンはこれを実践している会社ですが、IXIとDSBで行なっていることはまさにこの言葉通りなんです。
DSBは社会をよりよくするための事業を運営していますし、ここで生み出された利益を再投資してIXIなどで新しい事業を生み出しています。その一貫した活動を自分が責任を持って推進できる環境にやりがいを感じています。
ーIXI/DSBでの一貫した活動を進めるうえでメンバーに期待することとは。
目先の目標としては2027年1,000億円を掲げていますが、その先には2,000億、3,000億を見据えています。そのような成長を描くためには、メンバー、マネージャーを含めた一人ひとりが自分で考えて、自ら行動しなければなりません。
これまでの大企業は組織の長が決めたことに現場は従い動くという、ある意味でヒエラルキーの強い組織構造でした。やることが明確で、やるべきことを正しく行えば成長できた高度経済成長期は、それでよかったと思います。
しかし、今の時代は違います。もちろん意思決定のための組織階層は必要ですが、世の中に絶対的な正解がない現代では、誰もがフラットに提案やコミュニケーションを行い、新たな価値を見出していかなければなりません。そのためには、個々人の能力を最大限に発揮しなければならないし、マネジメントの在り方も変えなければならない。
これまで馴染んだ思考や行動を変えることは大変ですが、組織の成長に揺さぶりは常に必要です。自分の意志を持ち行動できる強い人財が集まる組織となれるよう、情報共有の在り方やミーティングの位置付け変更など、組織としても小さなことから取り組み始めています。
ニコイチで踏み出す、社会的課題解決への新たな一歩
THE ESSENTIALSの由来となったIXIのブランドステートメントで定めたように、事業を通じて社会の課題を解決し、よりよい社会を作るために。IXIとDSB「ニコイチ」での挑戦は、新たな一歩を踏み出したばかりです。新規事業づくりが目的となるのではなく、未来の社会にとって必要な新しい価値を創出できるように、私たちは歩みを進めていきます。
これからもIXIとDSB「ニコイチ」で取り組む様々な事業について、メンバーのリアルな想いや事業創造ストーリーなど、オムロンの新たな挑戦の裏側をお伝えしていきますので、引き続きご覧ください。